クリスチャン・レオッタ
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会
クリスチャン・レオッタ クリスチャン・レオッタ
インフォメーション
~芸術への深い理解とベートーヴェンへの強い憧憬~
カール・ツェルニーそしてアルトゥール・シュナ-ベル等ベートーヴェンに深く繋がるピアニストに与し、ベートーヴェンの真の伝道師を自認しているクリスチャン・レオッタについて、1st stageにお越しいただいた岡田暁生先生(音楽学者)は彼の演奏について次のように語っています。
「ポストモダンもピリオド楽器もくそくらえ!!
あくまでベートーヴェンの精神性と古典性そして記念碑性に愚直なまでにこだわる。
かといって、ドイツ観念論的、形而上学的お説教くささは微塵も感じさせない。
例えて言えば、アポロ的な静謐で満たされたギリシャ神殿のごときベートーヴェンである。」
若き巨匠が紡ぎだす、凄まじくも美しいベートーヴェンの世界をどうぞご堪能ください。
公演名 | ALTI芸術劇場 Vol.27 クリスチャン・レオッタ ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会 2nd stage |
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日時・プログラム |
4/29(金・祝) 14:00開演 第11番、第5番、第27番、第23番「熱情」 4/30(土) 14:00開演 マスタークラス&中村孝義氏との対談を実施 入場料1,000円(本公演のチケット提示で無料) 5/5(木・祝) 14:00開演 第14番「月光」、第2番、第7番、第26番「告別」 ※各日、開演30分前より中村孝義氏(大阪音楽大学理事長・教授)によるプレトークあり ※都合により曲目や曲順が変更になる場合がございます。 |
会場 | 京都府立府民ホール アルティ |
出演 | クリスチャン・レオッタ |
料金 |
【1回券】 |
チケット取扱 | 京都府立府民ホール075-441-1414 京都府立文化芸術会館075-222-1046 チケットぴあ 0570-02-9999 [Pコード:5回券 781-986 1回券 282-113] ローソンチケット 0570-000-777 [Lコード:5回券 58945 1回券 58909] |
チケット発売日 |
■5回券(解説本つき) 発売中 ■1回券 発売中 |
お問合せ | 京都府立府民ホール075-441-1414 (9時~18時/第1・第3月曜日休館) |
主催 | 京都府、イタリア文化会館―大阪、創 <(公財)京都文化財団・(株)コングレ共同事業体> 【京都府舞台芸術振興・次世代体験推進事業】 |
協賛 | 国際ソロプチミスト京都―東山 |
助成 | 芸術文化振興基金助成事業(申請中)、公益財団法人ロームミュージックファンデーション(申請中) |
後援 | 琳派400年記念祭委員会、朝日新聞京都総局、京都新聞、産経新聞社、日本経済新聞社大阪本社、毎日新聞京都支局、読売新聞京都総局 |
協力 | 株式会社 春秋社、株式会社キャビック、株式会社キングインターナショナル |
4/30(土) 14:00~マスタークラス&中村孝義氏との対談を実施!!
レオッタ氏のベートーヴェンに対する深い理解と完璧な技術に触れる貴重な機会です。全公演でプレトークをしてくださる中村孝義氏との対談も実施。ぜひお楽しみください。
練習曲:ピアノソナタ第27番ホ短調Op.90より第1楽章(予定)
入場料:1,000円(本公演のチケット提示で無料)※座席自由
国際ソロプチミスト京都-東山様のご協賛により、
車椅子の方と付き添いの方をご招待!! ※事前申込み
●2nd stage 応募締切:3月25日(金)PM6時
●希望者はFAXまたはメールにて下記内容を明記しお申込みください。
①希望日 ②希望者氏名 ③ご住所 ④電話番号 ⑤付添者氏名
●お申込み先:京都府立府民ホール”アルティ”
FAX:075-441-6911 Email : hall@alti.org
※応募者多数の場合は抽選とさせていただきます(4月初旬)。応募いただいた方には、当選・落選にかかわらず、ご連絡差し上げます。
※当選者には、クリスチャン・レオッタ演奏会招待券および、タクシーチケット(往復上限2000円分)を一緒にお送りいたします。送迎は株式会社キャビック様のもと行います。
※締切後も定員に達していなければ申込みを受け付けます。お問合せください。
プロフィール
Christian Leotta
クリスチャン・レオッタ(ピアノ)
http://www.christianleotta.com/
ロザリン・テューレックには「生まれながらの驚くべき音楽性を身につけたたぐいまれな才能」と、また、カール・ウルリッヒ・シュナーベルからは「古典派、ロマン派の作曲家の指示に対する彼の解釈は素晴らしくかつ完璧であり、彼らの意図を理解している」と評された。
カターニア生まれ。7才よりピアノを始める。ミラノのG.ヴェルディ音楽院のマリオ・パトゥッツィのもとで学んだ後、コモ湖のテオ・リーヴェン国際ピアノ財団及びオクスフォードのテューレックバッハ研究財団で学ぶ。
2002年にはモントリオールにて、若干22才でベートーヴェンのピアノソナタ全32 曲を披露するという偉業を成し遂げた。それは60年代にダニエル・バレンボイムが成し遂げた以来の出来事であった。以後、ベートーヴェンのピアノソナタ全32曲演奏を欧米の主要都市で披露。この芸術活動により2004年イタリア共和国大統領より功労賞を授けられる。
興業の成功と高い評価をうけ、2007年にはアトマ・クラシック社と全32 曲の10枚のCDへの録音に取りかかり、2008年から2013年にかけて全曲をリリース。国際的にも非常に高い評価をうけ、レオッタ自身「現代の最も優れたベートーヴェン弾きの一人」として評され、CDも「今まで世に出た一連の中で最も卓越した作品」とされた。
2010年にグアダラハラのデゴラド劇場でなされた、ベートーヴェンの5つの協奏曲、および合唱幻想曲の演奏において、新聞紙面では「レオッタは並外れている。激しく抗いがたいリリシズム、奏法と共に押し寄せる熱情」と評される。
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン室内管弦楽団、RAI国立交響楽団、ミラノG.ヴェルディ交響楽団等と世界の主要ホールにて共演。
今年はすでにベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会をバンコク(タイ)、コモ(イタリア)で終了させたほかアルジェリア、ベルガモ、トラパニ、メッシーナ(イタリア)での演奏会が進行中。京都府立府民ホール“アルティ”が自身20 回目の全曲演奏会となる。アルジェリアではアフリカ初、そしてバンコクではタイで初となり、ベートーヴェンの優れた演奏家として、多くの国や主要な都市において全曲演奏会を披露する初の演奏家となっている。
2016 年には、昨年カナダ・ケベック州のthe Palais Montcalm で録音された、ベートーヴェンのディアベッリ変奏曲を含む新しいCD がアトマ・クラシック社より発売される。
2015年12月に府民ホール“アルティ”での1st Stageをスタンディングオベーションで終えた。
公演レポート
ALTI芸術劇場 Vol.27 (全5回公演)
クリスチャン・レオッタ ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会 2nd stage
第1回公演:2016年4月29日(金・祝)
第11番、第5番、第27番、第23番「熱情」
第2回公演:2016年5月5日(木・祝)
第14番「月光」、第2番、第7番、第26番「告別」
第3回公演:2016年5月8日(日)
第12番、第4番、第20番、第29番「ハンマークラヴィーア」
第4回公演:2016年5月12日(木)
第9番、第21番「ワルトシュタイン」、第18番、第31番
第5回公演:2016年5月15日(日)
第16番、第8番「悲愴」、第24番、第32番
マスタークラス:2016年4月30日(土)
(第1部)マスタークラス (第2部)クリスチャン・レオッタ×中村孝義氏 対談
【後半レポート】第2回~第5回公演 レポート
4月29日(金・祝)に始まったベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会 2nd stage。レオッタ氏の語る「ベートーヴェンの遺言である楽譜に命を吹きこみ、聴衆の皆様との仲介役を果たす」演奏会も残す所あと4回。清々しい5月の連休は、雨天をはさみながらも、天の祝福を受けるかの如くレオッタ氏の公演日は全日晴天の青空。深まる新緑の鮮やかさに呼応するかのように、レオッタ氏の演奏も回を重ねる毎に奥行きのある深みを増していきます。
1st stageに引き続き、各公演前に行われた、大阪音楽大学名誉教授・理事長であり、今回の企画のために「ベートーヴェン 器楽・室内楽の宇宙」を書き下ろされた、中村孝義氏による恒例のプレトーク。2nd stage第2回目は、「ベートーヴェンはタイトルをどのようにとらえていたか」、「タイトル付き作品とシェイクスピア作品との関連」についての興味深い解説からスタート。第3回目「ベートーヴェンにおける変奏の重要性」、第4回目「ベートーヴェンのバッハへの想いと到達したフーガ形式による表現」と続き、最終回は、プレトークの総括と、ピアノ・ソナタのみならずベートーヴェンの全曲を知ることの意義について、丁寧にひもといていただきました。
各回ほぼ満席の客席には、1st stageから欠かさず鑑賞くださっているお客様のお姿も見え、レオッタ氏の言葉通り聴衆と作り上げていく音楽会となっていることを実感。そして、この全曲演奏会での試みとして、第14番「月光」、第23番「熱情」、第29番「ハンマークラヴィーア」、第31番が1st stageと2nd stageでそれぞれ弾かれ、1st stageにも足を運んでくださったお客様には、聴き比べも楽しみな企画となりました。特筆すべきは、第29番「ハンマークラヴィーア」。前回のオーケストラを指揮するような力強く見事な構成に加え、今回はさらに緊張感とロマンチックな要素、時にユーモラスな一面が加わり、その第4楽章に向かって微細な細胞の1つ1つが集まり一つの巨大な宇宙を形成しながらも、その中心は無限へとつながる“空(くう)”であるような世界が展開されました。生命の神秘に触れるような演奏。まさに奇跡です。
2nd stage 初期作品の中で心に残った第7番。寄り添う者と歩む姿、あまりにも深い悲しみと絶望。自問自答しながら自己を鼓舞するかのような、絶妙なスタッカートの音。最後の登り降りする音階と和音の美しさ。そして、発見は第8番「悲愴」第2楽章。今までに聴いたことのない応援エールのような演奏に、心が温かいものに包まれたかのような瞬間でした。
演奏された中期作品の中でまず驚いたのは、第16番の第1楽章のペダル使用の少なさ。4月30日の中村氏との対談で、「レガートを作りたいときには、指づかいとタッチの仕方で、そのレガートを表現せよとベートーヴェンは求めている。そこがモーツァルトとは違う」とのレオッタ氏の言葉が思いおこされます。なるほどこれがベートーヴェンなのか、と。第21番「ワルトシュタイン」の第2〜3楽章では、この世のものとは思われない想像を超えた美しい音を紡ぎだすレオッタ氏。力強い大きな何かが常に温かく見守ってくれているような愛が溢れています。
後期作品からは、2回目の演奏となる第31番。中村氏がプレトークで語った「現実に経験しているものがソナタ形式では表現しきれなくなり、変奏曲のスタイル、フーガのスタイルを用いることよってより深い世界をつくっていった」作品を、“まさにこの音”としか思われないような音で表現したレオッタ氏。そして最後の第32番。第1楽章では、すべてを巻き込みながら大きくうねる生命体のようなものが、絶妙なテンポの運びによって表現され、第2楽章では、死を迎え入れるかのような歌が響き、最後には無上な神秘的世界へと誘われる、慈しみに満たされた名演が繰り広げられました。
各公演終了とともに、鳴り止まぬ拍手とスタンディングオベーションに迎えられ、カーテンコールに応じていたレオッタ氏。1st stageから一貫してアンコール演奏がなかったのですが、最終日もやはりアンコール演奏はなし。「この全曲演奏会公演を行うにあたって、第32番最後のハ長調の和音の響きで最後にホールを満たしたかった」とレオッタ氏。「なぜならこのような和音の終わりかたは珍しく、最後でありながらもここから何かが始まるような音でもあるからです」と。
最終日には交流会が開催され、レオッタ氏のベートーヴェンピアノソナタ全曲への想い、さらに充実させたいという情熱、中村氏がレオッタ氏の小細工のない正面からのベートーヴェンとの対峙の姿勢に感動されたお話などを聞くことができました。さらに素敵なハプニングがあり、なんと22年前、レオッタ氏15歳の時に、イタリアのコモ湖でレオッタ氏と共演された女性が、当時のレオッタ氏との写真を持参してコンサートにお越しくださっていたのです。22年ぶりの再会にレオッタ氏も破顔一笑。音楽が人と人との縁を結ぶ奇跡で、全公演の幕が閉じられました。
【レオッタ氏からのメッセージ 】
昨年の演奏会から5ヵ月。この間に他の演奏会にも出ていましたが、その1つ1つの演奏会が自分を省みる機会であり、今回の2nd stageにもいかされていると思っています。1st stage と2nd stage で弾いた4つのソナタの変化を感じていただけたらとても嬉しいです。そして 1st stage、2nd stageと足を運んでくださったみなさま、本当にありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしております。
撮影:福家 さやか
ご参加いただいた方々からのメッセージ
- 最初から最後まで釘付けでした。知っている曲も知らない曲も、楽しすぎてすごく充実した時間でした。こんな企画があったらまた必ずきます。クリスチャン・レオッタさん、幸せな時間を本当にありがとうございました。(10代 女性)
- レオッタ氏の演奏が大変素晴らしかったのはもちろん、中村先生のお話やマスタークラス等、企画も充実していて大変楽しませていただきました。東京在住ながら、通し券を買ったので、夜行バスで日帰りの日程もあったのですが、本当に聴くことができてよかったです。素晴らしい機会をありがとうございました。ベートーヴェンも京都もさらに好きになりました。(20代 女性)
- 車イスの母親と共に来場させていただきました。あつかましくも一番前の場所で演奏を聴くことができ、大変光栄でした。素敵な思い出をありがとうございました!!(30代 女性)
- 12月の1stステージの前に新聞で「ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会」があると知り、“面白そう、1回行ってみよう!”と軽い気持ちで来たのですが、最初の1音を聴いただけで、これは、こちらも集中して真剣に聴かなければ何かにのみこまれそうな、溺れてしまいそうな感じがしました。有名な曲しか知らなかったのですが、初めて聴く曲は“こんな素敵な曲なんだ”と思い、知っている曲は“こんなかっこいい曲だったっけ?”と思いました。今回の「悲愴」の第2楽章は美しすぎて涙が出ました。レオッタさん、中村先生お疲れ様でした。ありがとうございました。(40代 女性)
- ハンマークラヴィーアの演奏はアルティ史上に残る名演奏でした。伝説がまた1つ生まれました。(50代 男性)
- テクニックと音楽性、素晴らしいピアニスト。深遠な音楽的表現など聴かせていただきました。交響曲、弦楽四重奏曲、ヴァイオリンソナタ、そしてピアノソナタ。ベートーヴェンという作曲家の作品を、現在私達が聴ける事、偉大な芸術家であることを再確認できた9日間でした。ありがとうございました。(50代 女性)
- すばらしいピアノでした。ホールに響きわたっている音につつまれて、とっても幸せでした。まるでベートーヴェンがそこにあらわれて、ピアノを弾いているような気分でした。本当にありがとうございました。(60代 女性)
- ベートーヴェンの真髄を心をこめて一曲一曲を弾いて下さり、本当に熱いものがこみ上げて参りました。素敵な演奏でした。(70代 女性)
- 何とダイナミックでシンフォニックな演奏であったか。過度の思い入れもなく、たんたんと弾いておられたのが好感のもてるものでした。(70代 男性)
【前半レポート】第1回公演&記者会見&マスタークラス レポート
新緑が目に鮮やかに光る4月29日(金・祝)、待ちに待ったALTI芸術劇場vol.27クリスチャン・レオッタ ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会 2nd stage(全5回)が幕を開けました。A席の通し券を買われたお客様の中から48名限定で、お呈茶のサービスが。折り重なる緑の中に、山ツツジの鮮やかな朱色が映える日本庭園に囲まれたお茶室にて、公演前のひとときを楽しまれていました。
公演前には、1st stage に引き続き、大阪音楽大学名誉教授・理事長であり、今回の企画のために「ベートーヴェン 器楽・室内楽の宇宙」を書き下ろされた、中村孝義氏によるプレトークが行われました。1st stageでのおさらいに続いて、今回はタイトル(「月光」「熱情」「テンペスト」といった)についてのお話。ベートーヴェンが自身でつけた曲のタイトルについて、曲の内容との関係をベートーヴェンがどのように考えていたのかを、次回5月5日(木・祝)13時30分からのプレトークで解説していただけるとのこと。レオッタ氏の演奏をひもときながら、同時にベートーヴェンの音楽の深淵にふれる解説に、客席ではメモをとる方もいらっしゃいました。
客席はほぼ満席。2nd stage ではどんな演奏を聴く事ができるのか期待を膨らませる中、まず心をわしづかみにされた、1曲目第11番(変ロ長調)の第2楽章。なんと繊細で優しく美しい音でしょう。レオッタ氏の正確で繊細なタッチと絶妙な間で、内面の豊かさが描かれていきます。そして第4楽章では、1つ1つの音がまるで生きているかのように自在に響きわたります。また、そのテンポによって、ためらいやあたかも自己を鼓舞するような感情を喚起させるのは、今を生きる人々へのエールのよう。「ベートーヴェンのソナタには、情熱や悲劇など彼の内面のみならず、周囲の社会的な状況も色濃く反映されている。これらを弾くことは単なる演奏ではなく、人類へメッセージを伝えること」とのレオッタ氏の言葉が思い出されます。
そして、2曲目の第5番(ハ短調)で、レオッタ氏の音は語りかけてくるということを再認識。フッと力を抜くそのタイミングと呼吸。弾いていない時に匂いたつ響きがそこにあります。さらに、休憩をはさんで、第27番(ホ短調)の第2楽章ラストの愛らしいこと! 何という音の表情の豊かさでしょうか。と興奮さめやらぬまま、4曲目の第23番「熱情」(ヘ短調)へ。昨年の演奏からさらに豊かな表現を携えて、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。第1楽章から第4楽章へ向かう音楽の流れがより明確に、そしてその中でそれぞれの音が立ち上がってくる、その迫力!演奏が終わると同時に沸き起こった熱い拍手とスタンディングオベーションの嵐の中、レオッタ氏は3回のカーテンコールに応えてくれました。
公演終了後は、エントランスホールにて記者会見とサイン会が行われました。イタリア総領事マルコ・ロンバルディ氏の挨拶で記者会見が始り、続いてレオッタ氏への質問が続きました。ベートーヴェンについてどう思われているか、ベートーヴェンピアノソナタの全曲演奏をどうとらえているか、ベートーヴェン以外の作品の演奏予定についてなど、演奏されているときと変らぬ誠実さと情熱で、丁寧にメディアからの質問に応えるレオッタ氏。「ベートーヴェンは私にとって親愛なる友人。要求が多すぎるけれど」「全曲を知ると1つ1つの曲への理解が全く違うものになる」「シューベルトのソナタをまとまった形で演奏したい」と。さらには、「ピアノソナタの何が素晴らしいか、それは言葉(歌詞や詩)が書かれていないということだ」と答えて会場を沸かせていました。ベートーヴェンの遺言である楽譜に命を吹きこみ、聴衆のみなさんとの仲介役を果たすのが使命だと語るレオッタ氏。日本の聴衆の皆様の集中力がよく伝わり、感謝しています、とも。レオッタ氏の豊かな音楽世界を、5月5日からの演奏会でも是非ご体感ください。
ご参加いただいた方々からのメッセージ
- いちばんさいごの音楽がすごかったです。(10代未満 男性)
- クリスチャンさんの公演は初めてでしたが、やはりすばらしかったです。あと、ピアノの音質自体もすてきでした。(10代 女性)
- 本腰を入れてベートーヴェンを聞こうと思うきっかけになった。(20代 女性)
- 非常に丁寧な演奏で素晴らしかったです。(30代 男性)
- レオッタ氏のすばらしい演奏、庭園や京都御所の緑がまざり合うような不思議な感覚がありました。(40代 男性)
- こんなベートーヴェンきいたことがない。クラシックなのに9割の人が立って拍手をしていた。(50代 女性)
- レオッタ氏のピアノは奇をてらわず堅実である。でも、面白味がないかというとさにあらず。「熱情」などは、かなり熱のこもった演奏であった。このレベルの演奏はそうは聴けない。(50代 男性)
- コンサート直前のプレトークは大変勉強になります。(50代 男性)
- そもそもベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会の企画がよい。地味なプログラムなのによく人が入っている。人気のある曲を入れる等の工夫をしているからか?こういうチャレンジを続けてほしい。(60代 男性)
- 何度聴いても凄いものは凄い。(60代 女性)
- 今まで、もう一つよくわからなかったのですが、今回は、我知らず立ち上がっていました。ぞくぞくするものがありました。この歳にして、音楽開眠かと。感謝です。(70代 女性)
- こんなベートーヴェンきいたことがない。クラシックなのに9割の人が立って拍手をしていた。(50代 女性)
- やはり全曲コンサートはいいですね。レオッタさんの精力に感謝し、賞讃の拍手を送ります。(70代 男性)
【番外編】
4 月30 日(土)14 時~は、マスタークラス&レオッタ氏と中村孝義氏による対談が開催されました。レオッタ氏のベートーヴェンに対する深い理解と高い演奏技術の秘密を伺い知る事ができる貴重な機会となりました。
まずは京都女子大学 2 回生の音田真陽さんによって第27番の第 1楽章の演奏が。続いて、楽譜に記された音譜記号を正確に読み取るということ、ペダルの使い方、オーケストラの音楽の構成を念頭において演奏することなどを、楽譜を丁寧に読み解きながら細かくアドバイスをするレオッタ氏。「ベートーヴェンとつきあう人生というのは、そう簡単ではありません」とレオッタ氏。19 世紀から受け継いだ人しか弾けないというスフォルツァンドの秘技、沈黙も音楽の一つであるという言葉、レッスンの中に溢れる宝石のような音楽への深い愛情。そしてまた、音田さんもレオッタ氏のレッスンを素直に受け、しなやかにその表現を進化させていく様子がドラマチックなマスタークラスでした。
続くレオッタ氏と中村孝義氏との対談では、レオッタ氏の演奏の秘密に迫りながら、ベートーヴェンのピアノソナタの魅力がひもとかれていきました。まずは観客の方からのペダルの使い方の質問に、「逆説的だけれど、ベートーヴェンにおけるペダルの使用は、レガートのためのものではなく、和声をしっかりきかせるためのもの」というレオッタ氏の興味深い答えが。中村氏がレオッタ氏の演奏のわかりやすさと含蓄ある表現を、あたかも難しい哲学書がすばらしい解釈者によって平易に表現されているようだと言及されると、師のシュナーベル氏との 5 年間の付き合い、すべてを教え且つ生徒を主体性のある独立した人として扱うその教授方法に影響されているとも。
また、中村氏の「ベートーヴェンは器楽人だ」の言葉に、レオッタ氏は「言葉によらない音は、何も伝えないこともできる。しかし何かが伝わるとするなら、それは演奏者の魂と聴衆の魂がお互いに届いたということではないか」と。この言葉には中村氏も思わず「面白い!」と。中村氏の提起するベートーヴェンのタイトルについての問題には、後世の人がつけたタイトルは私は意識しない、とレオッタ氏。それよりも、ベートーヴェンピアノソナタの楽譜で一番最初に見なければいけないのは、誰に捧げられたものであるかということだとのお話が。なぜなら、献呈された人とベートーヴェンとの絆はとても大切なもので、時を超えて存在するものだからなのだと。最後には、一般の人に向けて、いい演奏者の録音を聞くこと、手始めにメイナード・ソロモンが書いたベートーヴェンの伝記を入り口にされてはとのアドバイスで対談がしめくくられました。
撮影:福家 さやか
【京都女子大学2回生 音田 真陽さんの感想】
レオッタ氏は舞台裏にいらっしゃるときから、無意識に緊張していたであろう私にそっと話しかけてくださり、とても優しい方だと感じました。音楽の空気感や音 質にこだわった、ダイナミクスの幅広さやその表情や意味についての説明にも共感しました。私の演奏についても非常によく聴いてくださり、自らの演奏も丁寧 に見せてくださり、とても勉強になり幸せな時間でした。ベートーヴェンの音楽への愛が益々深まる貴重な体験となりました。ありがとうございました。
ご参加いただいた方々からのメッセージ
- 大変勉強になりました。またこうした機会があれば参加したいです。(20代 女性)
- レオッタ氏の演奏の背後にある哲学、姿勢を知る、すばらしい機会でした。言及された書物や演奏に触れてみたいと思います。後日のコンサートも、とても楽しみです。(30代 男性)
- 楽譜通りに弾く大切さ、ペダルの使い方、スフォルツァンドの手首の使い方など勉強になりました。音田さんの演奏もすばらしかったです。レオッタさんのアドバイスを受けてすぐに修正できるのもすごいと思いました。フォルテも内に向けての物と、外に向けての物があるということを初めて知り、奥が深いなと思いました。対談も興味深いものでした。レオッタさんの演奏と先生の本を読むことで、より深くベートーヴェンを楽しめそうです。(40代 女性)
- ベートーヴェンの奥深さを実感しました。あと4回を楽しみにしています。(50代 男性)
- 指導されている内容を聞いて、いかにレオッタさんが卓越した技術を持っておられるかを知り、何を大切にされてベートーヴェンを演奏されているか、一部ですが分かることが出来ました。レオッタさんの哲学的演奏の源を知ることができました。次回のレオッタさんの演奏を聞く楽しみが増しました。今日は来館してよかったです。(60代 女性)
- ベートーヴェンのピアノソナタをシュナーベル氏の弟子のレオッタさんの指導で、正しい演奏とはどういうことなのか、取り組むべき姿勢、精神を直接聴講できた。これからのベートーヴェンの音楽の聴き方も改善できたと思う!ピアニッシモの時のペダル、リタルダンド、スフォルツァンド、フェルマータなど、ベートーヴェンの意図とは何か、など興味深く聴講できた。現代のグランドピアノとベートーヴェンの時代のフォルテピアノについてなど、ピアノの歴史についてなど(初期のチェンバロなど)知っておくべきことをたくさん聴講できたことは、大変有り難いと思う!(60代 男性)
- 大変興味深い貴重なワークショップでした。レオッタさん、関係者各位に感謝します。(70代 男性)
公演インフォメーション
クリスチャン・レオッタ ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会 2nd stage
アルバム
ALTI芸術劇場vol.25 クリスチャン・レオッタ ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会