音楽、舞台、照明、ダンス。無声劇ならではの雄弁さを再確認。
2013年3月9日(土)・10日(日)、「ALTI 芸術劇場 vol.7」を開催いたしました。2012年度 ALTI 芸術劇場を締め括る第七回は、アルティ・アーティスト・プロジェクト(以下A.A.P.)の〝ブヨウ部門〟がお届けするストラヴィンスキーの『春の祭典』と『火の鳥~HAZAMA~』二本立て。A.A.P.独自の演出で生まれ変わった二作品は、それぞれピアノの生演奏と打楽器のパフォーマンスをバックに、闇の中で照らし出されたヒトの身体の動き、その妖しくも美しい魅力に引き込まれるステージでした。
山口陽子氏振付『火の鳥~HAZAMA~』
河邉こずえ氏振付『春の祭典』
9日のプレトーク「公演への誘い」には、愛知芸術文化センター主任学芸員・唐津絵理氏をゲストに招き、ストラヴィンスキーとロシア・バレエ(バレエ・リュス)の歴史、現代芸術に与えた影響等についてご紹介いただきました。
『春の祭典』『火の鳥』は、イーゴリ・ストラヴィンスキーがバレエ界の革命児として20世紀初頭に台頭することになった作品。当時のバレエ界の常識を覆す演出や音楽、振付けなどで賛否両論を巻き起こした話題作――そんな二作品に、A.A.P.の若手舞踊家二名が振付家として挑戦したのが本公演です。
公演への誘いゲスト、唐津絵理氏
会場は9・10日、両日とも超満員!
望月則彦監督の推薦から『春の祭典』を河邉こずえ氏、『火の鳥』を山口陽子氏がそれぞれ担当。ホールの電動可動床を活用したバラエティと緩急に富んだステージングで終演まで観る者の目を耳を奪い飽きさせませんでした。
『火の鳥』では舞台全体を使ったダイナミックなステージングや、客席までをも舞台に広げた演出、照明量と連動したメリハリの効いたシーン構成、躍動感溢れるダンスの相方ともなった迫力満点の打楽器などが、最後の最後までワクワク感を持続させてくれました。クライマックスは荘厳な空気を見事に描き出していました。
『火の鳥~HAZAMA~』には打楽器が
『春の祭典』ではピアノが生演奏
『春の祭典』では緊張感溢れるピアノの旋律とキレのあるダンス、広い舞台をあえてスポット的に利用したステージングが見事にマッチングし、危うく、妖しく、美しいシーンが丹念に濃密に描かれていました。花弁などの美術が照明の創り出す光と影の中で各シーンの密度をさらに増し、説得力に溢れたピアノが終演まで緊張の糸を解かず更に紡ぎ続けていきます。狂い咲き散る花弁の中、キレの良過ぎるエンディングが奇妙な余韻を残していました。
『火の鳥~HAZAMA~』より
『春の祭典』より
『春の祭典』より
公演終了後の交流会では振付家と出演者たち全員の挨拶がありました。ピアノのパトリック氏は本公演始動のきっかけとなった発案者で、交流会の乾杯の音頭もとっていただきました。突然のスピーチ要請に戸惑う出演者が多い中、火の鳥役の桑田氏は「人間の役をやらせてもらえない」とジョークを飛ばし、場を和ませてくれました。全員の挨拶の後、出演者たちと振る舞いのワインに舌を遊ばせながらの和気藹々の会となりました。
【写真1】左から『火の鳥』打楽器/後藤ゆり子氏、宮本妥子氏、
振付/山口陽子氏 【写真2】右側:桑田充氏
【写真1】左から『春の祭典』ピアノ/パトリック・ジグマノフスキー氏、
池田珠代氏、振付/河邉こずえ氏 【写真2】枡富元穂氏、中田一史氏
第七回終了を以って2012年度 ALTI 芸術劇場は無事全公演終了となりました。この場を借りて、ご参加ご愛顧いただいた皆々さまにお礼を申しあげます。誠にありがとうございました。また ALTI 芸術劇場 vol.8 でお会いしましょう!